転職回数が多くなりがちなエンジニア職ですが、次の転職を実行するまでのスパンについて気になりませんか?
転職回数の多さが不利にならないエンジニアでも、その期間があまりにも短ければマイナスイメージが生まれそうですよね。
本記事ではエンジニアの転職スパンについて言及し、転職を実行するうえでの適切なタイミングや成功に導くポイントについて解説しています。
エンジニアの転職をキャリアアップの機会と考えている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
- エンジニア転職における平均スパンをズバリ回答
- エンジニアの転職が多くなる理由について解説
- 転職を成功させるポイントと適切なタイミングを紹介
- 転職スパンの短さが明らかに不利となるケースとは
【結論】エンジニア転職における平均スパンは5~10年ほど
結論から言うとエンジニア転職における平均スパンは5~10年ほどです。スパンとはある時間の幅を意味しますから、平均スパンすなわち平均勤続年数になります。
エンジニアの平均勤続年数は企業によって著しく変化しますから、同じIT関連の会社でも業界による区分で考える必要があるでしょう。
平均勤続年数がいちばん短いのはインターネット業界で4年前後という数値が算出されています。反対にいちばん長いのは通信業界で、その値は14年ぐらいです。
そのほかの業界も加味すると、エンジニア転職における平均スパンが5~10年という結果が見えてきます。
【年代別】ITエンジニアの平均転職回数一覧
転職の平均スパンが5~10年ほどと判明したところで、年代別の平均転職回数と照らし合わせてみます。以下の表は年代別によるITエンジニアの平均転職回数です。
【年代別】ITエンジニアの平均転職回数(出典:「IT人材白書2017」独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)) |
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年齢層 | 転職経験なし | 1回 | 2回 | 3回以上 |
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20代 | 76.1% | 18.8% | 2% | 4% |
30代 | 45.4% | 23.9% | 17.9% | 12.8% |
40代 | 41.9% | 18.3% | 18.3% | 21.5% |
50代 | 44.4% | 23.5% | 17.3% | 14.8% |
4年生大卒(22歳でエンジニアに)の仮定で表を見ると、30代で転職回数1回の割合が多いのは平均スパンとかみ合った数字です。
さらに10年後となる40代の数字を見ても、平均スパンを否定するような値になっていません。5~10年で転職を経験するエンジニアの多さが表から見て取れます。
エンジニアは転職回数が多くても選考への影響が少ない
平均スパンや平均転職回数がこういった数字になるのは、エンジニアは転職回数が多くても選考への影響が少ないことに紐づきます。
IT業界ではスキルや経験を重視する傾向が強く、転職に関してはよほどネガティブな理由でない限りマイナスイメージにはなりません。
さらに転職を是とする業界の背景や、エンジニア独自の働き方にも起因します。次からはエンジニアの転職回数が多くなる理由について見ていきましょう。
エンジニアの転職回数が多くなる理由
エンジニアの転職回数が多くなる理由として、以下のことが考えられます。
- スキルの汎用性が高く即戦力になれる
- 人手不足で多くの企業から声がかかる
- 転職を通したスキルアップが見込めるため
- 業界自体が人材の移動に対してマイナスイメージを持っていない
- SESは多くの職場を経験すため希望の会社が見つかりやすい
エンジニア独自の事情もいくつか含まれています。それぞれの内容について、くわしく解説していきましょう。
①スキルの汎用性が高く即戦力になれる
エンジニアが使っている技術には共通性があり、それは日本だけの話でなく海外も同様です。
それぞれのエンジニアが働く環境によって微細な違いはありますが、同じプログラム言語をベースとした開発なら問題が発生することはほとんどありません。
スキル自体の汎用性が高く、転職してすぐに活躍できる可能性も高いです。これまでの経験を活かしやすく転職がしやすい職種のため、自然と転職回数が多くなります。
②人手不足で多くの企業から声がかかる
IT業界の人出不足は収まらず、エンジニアの求人倍率は依然高い状態を維持したままとなっています。
能力の高いエンジニアの確保はITに関わる企業の優先事項であり、良い条件を出してでも採用したいと考えているのが現状です。
もともとスキルと経験を重視するという採用方針があるため、転職回数の多さが影響することも少なくなります。
自身のスキルが高ければ高いほど、転職回数の多さを気にする必要もなくなっていくでしょう。
③転職を通したスキルアップが見込めるため
さまざまな職種を経験していくことでスキルアップを図るのは、エンジニアに浸透している主流の考え方です。
人員不足が深刻化しているIT業界では、複数のスキルを持っているエンジニアの需要が高まっています。
そのためひとりですべての工程をこなせる、フルスタックエンジニアを目指す人も少なくありません。
スキルアップのために転職を繰り返すことは間違った考えではないので、転職回数の増加は抑えられない現象となっています。
④業界自体が人材の移動に対してマイナスイメージを持っていない
エンジニアが転職をキャリアアップの機会と捉えているのは企業も認識しています。
スカウトによる転職も一般的であり、携わりたい仕事で職場を選ぶエンジニアが多いことも業界の共通認識です。
そのためIT領域に関わる企業は、転職に対して過度なマイナスイメージを持っていません。
先に解説したとおりエンジニアの確保は企業の急務ですから、引き抜きは別として人材の移動に対しては容認しなければならない状態と言えるのです。
⑤SESは多くの職場を経験すため希望の会社が見つかりやすい
エンジニアを派遣するSES企業に入ると、さまざまな場所に客先常駐して働くことになります。その中にはエンジニアとして魅力的に感じる企業もあるでしょう。
他人の意見ではなく自分の体験ですので、信頼性は確固たるものです。そのため転職を決意するきっかけとなっても不思議ではありません。
転職が成功するポイントはミスマッチを防ぐことです。常駐先でプロジェクトに貢献し能力を認められているケースなら、当然ミスマッチの懸念は少なくなります。
このようにエンジニア独自の労働形態も、転職回数の増加に関わっていると推測できるでしょう。
エンジニアが転職を成功させるポイント
ここまで解説を読んでこられた方の中には、転職回数が多くてもさしたる影響がないと認識しているかもしれません。
しかしながらある程度のスキルを要しているという大前提があっての話で、経験の浅いエンジニアには通用しないケースもあります。
ですが経験の浅いエンジニアでもいくつかのポイントを押さえておくことで、転職回数の多さをカバーすることが可能です。そのポイントとは以下のような内容になります。
- 転職の志望動機を前向きな内容にする
- エンジニアの中でもシステム基盤に関する職種を狙う
- AI・IoTなどの最新技術に精通しておく
- プロジェクトリーダーとして活躍できるマネジメント能力をつける
- 若手エンジニアの育成能力を身につける
- 副業でエンジニアとしての実績を作っておく
①転職の志望動機を前向きな内容にする
抑えておかなければならないポイントのひとつめは、志望動機を前向きな内容にすることです。転職理由が「逃げた」「諦めた」といったマイナスなものはNGとなります。
マイナスな転職理由でも、スキルアップやチャレンジといった前向きな理由に変換したものを用意することが大事です。
転職理由に多い人間関係に対する不満は多くの人が抱えるもので、ネガティブに分類されます。「もっと協調性を発揮できる環境で働きたい」といった内容に置き換えましょう。
エンジニア転職の志望動機例文
スキルに見合った給料がもらえていないと感じて転職した場合は、以下のように変換します。
「前職もシステムエンジニアとして業務に当たっていましたが、チャレンジする機会を多く与えてくれる貴社の評価制度に魅力を感じ応募させていただきました」
残業が多くプライベートの時間が少ないことが原因で前職を辞めたのなら、以下の分を参考に志望動機を組み立ててください。
「前職では業務をこなすことだけに注力していましたが、さらにレベルの高いエンジニアを目指すために、スキルを磨く時間の確保ができる貴社に応募しました」
②エンジニアの中でもシステム基盤に関する職種を狙う
転職を成功させるための基本的な考えは、企業に求められる人材になることです。そこでエンジニアの中でも需要の高い、システム基盤に携わる職種を狙ってみましょう。
さまざまな業界で必要とされているIT技術を運用するには、それを可能とするシステムの基盤が必要です。
そんなシステムの基盤を作るインフラエンジニアは、どこの企業でも欲しがる存在と言えます。需要がありながら未経験でもチャレンジしやすい点がさらにおすすめです。
近年ではクラウド上にシステムを置く企業も増えているので、クラウドエンジニアを狙うのも良いでしょう。
③AI・IoTなどの最新技術に精通しておく
職種ではなく技術に注目してみるのもポイントのひとつです。具体的にはAI・IoTなどの最新技術が挙がります。
AIに関する技術は発展途上であり、それに携わるAIエンジニアの数も不足しています。AIを活用したビジネスも広がり続けるため、転職のチャンスは大いにあるでしょう。
モノ同士をインターネットでつなぐIoT技術も、家電製品を中心に広く普及しています。これまでITとは無縁だった製品も、IoTを導入する可能性がないとは言えません。
さらに需要が広がりつつあるAI・IoTなどの最新技術に精通しておけば、転職回数を気にせずに選択肢を増やすことができます。
④プロジェクトリーダーとして活躍できるマネジメント能力をつける
優秀なエンジニアの確保とともに、プロジェクトを統括するリーダーが不足しているのも企業が直面している問題です。
マネジメント能力のあるエンジニアはさらに上の環境を目指せる可能性があるため、人材もかなり流動的になります。
逆の見方をすれば、マネジメント能力があることで転職のチャンスも広がるということです。転職回数が多くともリーダー経験があることで採用確率も上昇します。
プロジェクトリーダーとして活躍できるようなマネジメント能力を身に付ける機会があれば、恐れず積極的にチャレンジしておきましょう。
⑤若手エンジニアの育成能力を身につける
人材不足の懸念を払拭するために、自社でエンジニアを育てる企業も増加しています。そのため育成経験があるエンジニアの需要も高い傾向です。
業務をこなしながら経験の浅いエンジニアを指導できる人材は、どこの企業でも重要視されます。
多大なコストをかけずに自社で育成できるメリットを考えれば、転職回数が多くともできるだけ採用したいと考えるのは当然と言えるでしょう。
⑥副業でエンジニアとしての実績を作っておく
何度も言うとおり、転職にはスキルと経験が必要です。積み重ねる方法は問わないため、副業に従事するのも良いでしょう。
副業で実績を作る方法のおすすめな点は、今の会社を辞めることなくエンジニアの仕事を開始できるからです。
リスクを回避しながら転職の成功率を上げることができます。体力的につらかったり時間をよけいに消費したりする問題はありますが、不安の少ない方法です。
就業規則で副業が禁止されていないことが条件ですが、いろいろな経験が積めるうえに比較的実施しやすい手段となります。
エンジニアが転職する際の適切なタイミング
エンジニアが転職するのに5~10年のスパンが多いことは紹介しました。ここでは転職を実行する際の適切なタイミングについて解説していきます。
今所属している会社でスキルをしっかり取得して、可能な限り経験も積んでいることが前提です。
まずは内部的な事情としてプロジェクト途中の転職は避けるべきでしょう。会社や同僚に迷惑がかからない状態での転職が基本となります。
そのうえで求人が多くなり転職がしやすい時期となる、2~3月・9~10月に合わせられるとベストです。
エンジニアの転職スパンが短いことで不利になるケース
最後にエンジニアの転職スパンが短いことで、明確に不利となるケースについて確認しておきましょう。気を付けたいのは以下のパターンです。
- 短期退職が連続している
- 転職回数に比べてスキルが不十分
①短期退職が連続している
短期退職が連続していると、今回もすぐに辞めてしまうのではないかと思われる場合があります。
環境や待遇に対して不満を抱き、仕事を投げ出してしまうようなマイナスイメージを持たれると、その転職は成功しません。
最低でも2年程度は在職して、スキルを磨くことに専念しておくべきでしょう。それでも平均スパンよりは短いため、前向きな転職理由を用意しておく必要があります。
②転職回数に比べてスキルが不十分
転職回数に比べてスキルが不十分だと、ネガティブな理由で転職を繰り返しているのではないかと思われる危険があります。
似たような企業ばかりに転職していると自己分析ができていない可能性を疑われ、面接でのやり取りも信頼性の低いものと認識されてしまうでしょう。
転職回数に見合ったスキルがないのは、外的要因で辞めやすい人材と思われても仕方のない状態です。
【まとめ】エンジニア転職の平均スパンは?
エンジニアが転職するときの平均スパンは5~10年です。大卒でエンジニアになった場合、40代で平均2回の転職を経験する計算になります。
エンジニアの転職回数が多くなってしまう理由にはさまざまなものがあり、業界的にもそれを認識している状態です。
したがって転職のスパンが極端に短くなければ、転職自体の成功率には影響しないと推測されます。
転職を成功させるポイントをしっかりと押さえて、適切なタイミングを逃さず実行に移すことを考えれば、スパンについて過度に気にする必要はないでしょう。